最終確認日:2026年10月19日(法令・制度・金額は、この日に確認した内容です)
相続した山林の場所や境界が分からず、税金や管理の負担だけが残り、困っている方は少なくありません。相続土地国庫帰属制度を使えば、一定の要件を満たす土地を国に引き渡せる可能性があります。
ただし、山林・森林は境界不明、崖、倒木、不法投棄、間伐不足などで不承認になりやすい土地です。この記事では、申請できる人、期限、要件、費用、手順を順番に整理します。
審査手数料や負担金のほか、測量、伐採、廃棄物撤去などにかかる費用も見込んでおきましょう。まずは、この制度を使えそうか確認しましょう。
この記事のポイント!
- ✔山林も国庫帰属制度の対象になる場合があります
- ✔境界不明や倒木は不承認の原因になります
- ✔費用は手数料・負担金・追加費用で考えます
- ✔まず登記資料と現地写真をそろえます!
相続土地国庫帰属制度とは:山林の対象者と期限
相続土地国庫帰属制度は、相続などで取得した土地を、一定の要件を満たす場合に国へ引き渡せる制度です。制度は令和5年4月27日から始まりました。山林・森林も対象になり得ますが、すべての山林が承認されるわけではありません。
申請できるのは、基本的に相続または遺贈により土地を取得した人です。売買で取得した土地は、この制度の対象外です。共有地の場合は、共有者全員で共同申請する必要があります。
POINT
共有者の一部だけでは申請できません。山林を次の世代へ残すほど共有者が増え、全員の同意を集めにくくなります。
制度そのものに、相続開始から何か月以内という申請期限はありません。ただし、相続放棄は原則として相続開始を知った時から3か月以内です。相続登記は令和6年4月1日から義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です!
| 項目 | 期限・条件 | 山林での注意点 |
|---|---|---|
| 相続土地国庫帰属制度 | 制度自体に相続開始からの申請期限はない | 要件を満たすか事前確認が必要 |
| 相続放棄 | 原則として相続開始を知った時から3か月以内 | 山林だけを放棄する制度ではない |
| 相続登記 | 令和6年4月1日から義務化。取得を知った日から3年以内 | 共有者や相続人の整理が必要 |
相続した山林を国に引き渡したい場合は、まず所有者や共有者、担保権の有無を確認しましょう。制度の概要は、法務省と政府広報オンラインでも示されています(出典:法務省「法務省:相続土地国庫帰属制度について」、政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」)。
制度の仕組みや山林で問題になりやすい点は、相続土地国庫帰属制度で「国にいらない山林を返す」条件でも詳しく整理しています。この記事では、申請前に確認することを説明します。
山林を国に引き渡すための要件と注意点
相続土地国庫帰属制度には、申請段階で受け付けられない却下要件と、審査の結果として承認されない不承認要件があります。山林では、この2つを分けて確認します。
却下要件の例には、建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、通路など他人による使用が予定される土地、土壌汚染がある土地があります。さらに、境界が明らかでない土地や、所有権について争いがある土地も対象になります。
| 区分 | 主な要件 | 山林で起きやすい例 |
|---|---|---|
| 却下要件 | 境界が明らかでない土地 | 境界杭がない、隣地との認識が違う |
| 却下要件 | 他人の使用が予定される土地 | 作業道、水路、墓地、祠がある |
| 不承認要件 | 管理に過分な費用や労力がかかる崖がある土地 | 急傾斜地、崩落のおそれがある場所 |
| 不承認要件 | 通常管理を妨げる有体物がある土地 | 倒木、放置樹木、廃棄物、古い工作物 |
山林で特に問題になりやすいのは、境界が明らかでない土地です。登記簿に地番や面積が載っていても、現地で場所を特定できないことがあります。隣地所有者と所有権の争いがある場合も、申請前に整理が必要です。
不承認要件では、崖、倒木、竹林化、不法投棄、古い作業道、治山施設、崩落のおそれがある急傾斜地などが問題になり得ます。国が管理するのに大きな費用や手間がかかると判断されると、承認されにくくなります。
CHECK
- 登記簿で所有者、地番、地目、面積を確認する
- 公図で隣接地と道・水路の位置を確認する
- 固定資産税通知書で課税地目と評価額を見る
- 航空写真と現地写真で利用状況を記録する
- 倒木、廃棄物、崖、工作物の有無を確認する
引き取ることができない土地の要件は、法務省が整理しています(出典:法務省「法務省:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」)。山林を手放す方法を比較したい場合は、山林相続がいらない時の処分方法4選も参考になります!
相談現場から
実際の相談では、親の遺産がほとんどなく、山林の境界がはっきりしないまま相続することになったケースがありました。国庫帰属制度を調べたものの、相続放棄もできず、固定資産税を払い続ける形になりました。
境界と森林整備計画の確認手順
山林の申請前には、境界と森林の管理状況を分けて確認します。どちらも、承認されない理由になることがあります。特に山林では、資料上の場所と現地の認識がずれていることがあります。
境界確認では、まず法務局で登記事項証明書、公図、地積測量図の有無を確認します。山林では、地積測量図がない場合も多いです。地積測量図がないときは、公図や現地の地形だけで判断せず、必要に応じて専門家に確認しましょう!
- 登記事項証明書で所有者、地番、地目、面積を確認する
- 公図で隣地、道、水路との位置関係を見る
- 地積測量図の有無を法務局で確認する
- 現地で境界標、杭、石積み、尾根、沢を探す
- 林道、作業道、古い柵、工作物を写真に残す
- 隣地所有者が分かる場合は認識の相違がないか確認する
写真は、土地全体の状況が分かるものと、境界と考えられる地点が分かるものを分けて撮ります。隣地との接点、倒木、廃棄物、崖、水路、工作物の有無も記録します。正面だけでなく横や遠くからも撮ると、あとで状況を説明しやすくなります。
注意!
資料上の境界が、法的に確定した境界とは限りません。所有者不明、連絡不能、認識の相違がある場合は、申請前に法務局や土地家屋調査士へ相談しましょう。
森林の管理状況は、市町村の林務担当部署で確認します。市町村森林整備計画の対象区域か、求められる施業内容があるかを確認します。森林簿、森林計画図、過去の施業履歴、造林・間伐・保育の実施状況は、市町村、都道府県、森林組合、過去の管理者に確認します。
法務省の要件では、市町村森林整備計画に適合していない森林や、追加的な造林・間伐・保育が必要な森林は、不承認になり得ます。森林として利用されている土地では、国庫帰属後の森林管理も関係します。林野庁資料では、森林管理局・森林管理署が法務局の要件審査に協力することが示されています(出典:林野庁「(3)相続土地国庫帰属制度への対応」)。
境界杭や現地確認の進め方は、山林の境界の探し方で詳しく解説しています。測量が必要になりそうな場合は、山林の測量費用の考え方もあわせて確認しましょう!
相談現場から
実際の相談では、山林を相続したものの周辺の地主が誰か分からず、市役所への問い合わせが後回しになったケースがありました。課税地目や評価額を確認すると、現況との違いが見つかることもあります。
費用の目安:審査手数料・負担金と追加費用
相続土地国庫帰属制度の主な費用は、審査手数料と負担金です。審査手数料は、土地1筆ごとに必要です。申請後に却下・不承認となっても返還されないため、申請前の確認が重要です。
承認された場合は、10年分の土地管理費相当額として負担金を納付します。負担金を納付すると、土地の所有権が国に移転します。制度にかかる費用は、申請時だけでなく、承認後に支払う負担金まで含めて考えましょう。
| 費用の種類 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 審査手数料 | 申請時に土地1筆ごとに必要 | 却下・不承認でも返還されない |
| 負担金 | 承認後に納付する10年分の土地管理費相当額 | 納付後に国へ所有権が移転する |
| 相続登記関連費用 | 戸籍収集、評価証明書、登記申請など | 相続人の数や資料の状況で変わる |
| 現地対応費用 | 測量、境界確認、伐採、倒木処理、廃棄物撤去など | 山林の状態により大きく変わる |
| 専門家報酬 | 司法書士、土地家屋調査士、行政書士、弁護士など | 依頼範囲により異なる |
山林・森林の負担金は、土地の面積などに応じて算定されます。複数筆の山林では、筆数や隣接地の合算申出の有無で考え方が変わります。登記地目が山林でも、実際の利用状況が農地、宅地、原野などと異なる場合は、負担金や審査の扱いに影響する可能性があります。
POINT
審査手数料と負担金だけで、総額を見積もらないようにしましょう。山林では、測量・境界確認・伐採・撤去の費用が大きくなることがあります。
総額を見積もるときは、1筆だけの山林か、複数筆の山林かを分けます。次に、境界確認が必要か、撤去・伐採が必要か、共有者調整が必要かを確認します。遠方の山林では、現地確認の交通費や立会いの負担も見込む必要があります。
制度の費用や負担金の考え方は、法務省の概要で示されています(出典:法務省「法務省:相続土地国庫帰属制度の概要」)。山林を取得価格だけで判断すると、あとから維持管理や測量の費用が出ることがあります。固定資産税が気になる場合は、山林の固定資産税がかからない理由と免税点の仕組みも確認しておきましょう!
申請の手順と不承認時の対応の比較
手続きは、事前相談から始めるのが安全です。申請先は、土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局です。山林が遠方にある場合は、事前相談の方法を早めに確認しましょう。
- 法務局へ事前相談する
- 登記事項証明書、公図、現地写真などを集める
- 相続登記や共有者の同意を確認する
- 承認申請書を作成する
- 土地所在地を管轄する法務局へ申請する
- 法務局による書面審査・実地調査を受ける
- 承認または不承認の判断を受ける
- 承認された場合は負担金を納付する
- 土地の所有権が国に移転する
申請前には、相続登記が必要か、共有者全員が申請に同意しているか、担保権や賃借権などが残っていないかを確認します。山林が国庫帰属した後は、森林として利用されている土地の管理も関係します。林野庁資料では、森林管理局・森林管理署が法務局の要件審査に協力し、国庫帰属後の森林管理を行うことが示されています(出典:林野庁「(3)相続土地国庫帰属制度への対応」)。
| 不承認になりやすい状態 | 申請前に考える対応 |
|---|---|
| 境界が確認できない | 資料調査、隣地確認、必要に応じて測量を検討する |
| 隣地所有者と争いがある | 申請前に認識の違いを整理する |
| 急傾斜で管理費用が大きい | 現地写真を撮り、管理上の問題を確認する |
| 倒木や廃棄物が残っている | 撤去費用と撤去の必要性を確認する |
| 造林・間伐・保育が不足している | 市町村森林整備計画との関係を確認する |
制度を使えない場合は、森林組合への相談、隣地所有者や林業事業体への譲渡、自治体や地域団体への寄附相談、森林経営管理制度の利用可能性の確認を検討します。山林が売れにくい場合でも、相手先や条件を変えて検討できることがあります!
注意!
相続放棄は山林だけを放棄する手続きではありません。預貯金などプラスの財産も含めて相続しない手続きなので、国庫帰属制度とは効果と期限が異なります。
相続放棄と国庫帰属制度を比べるときは、期限、対象財産、費用、家族への影響を分けて考えます。農地も一緒に相続する場合は、農地特有の制限もあります。農地の扱いは、いらない農地の相続を回避・放棄する現実的な手段で整理しています。
制度の根拠は、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律です(出典:e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」)。不承認要件は法務省のQ&Aにも整理されています(出典:法務省「法務省:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」)。
あわせて読みたい
よくある質問
相続土地国庫帰属制度で山林は国に引き渡せますか?
山林・森林も制度の対象になり得ます。ただし、境界が明らかでない土地、管理に過分な費用や労力がかかる土地などは、却下または不承認になる可能性があります。
相続土地国庫帰属制度に申請期限はありますか?
制度自体に、相続開始から何か月以内という申請期限はありません。ただし、相続放棄は原則として相続開始を知った時から3か月以内、相続登記は不動産取得を知った日から3年以内の申請が必要です。
山林の境界が分からないまま申請できますか?
境界が明らかでない土地は、制度上問題になります。登記事項証明書、公図、地積測量図、現地写真をそろえ、必要に応じて法務局や土地家屋調査士に相談しましょう。
費用は審査手数料と負担金だけで足りますか?
審査手数料と負担金のほかに、相続登記、戸籍収集、測量、境界確認、伐採、倒木処理、廃棄物撤去、専門家報酬などが発生する場合があります。山林の状態ごとに分けて見積もることが大切です。
国庫帰属制度が使えない場合はどうすればよいですか?
森林組合、隣地所有者、林業事業体、自治体や地域団体への相談を検討します。相続放棄と比較する場合は、山林だけを放棄できる制度ではない点と、期限がある点に注意が必要です。
まずは、山林の登記事項証明書・公図・現地写真をそろえ、土地の所在地、地番、境界、倒木や廃棄物の有無を確認しましょう。そのうえで、土地所在地を管轄する法務局の事前相談で申請可能性を確認するのが最初の行動です。
境界、共有者、相続登記、森林整備計画が関わると判断が難しくなります。個別の事情は、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、弁護士などの専門家に確認しながら進めてください。

