林野庁の公表によると、森林環境譲与税の使途は森林整備や木材利用・普及啓発の2つに大別されます。
ですが、細かい自治体別の使途は、この税制度自体に詳しくならないと見えてこないものです。
実際、
「令和から森林環境譲与税の予算が突然割り当てられたものの、何に使えばよいか(何を申請すればよいか)わからない。」
そういった自治体の職員様の現場の声、その予算を活用したい林業事業体の現場の声をよく耳にします。
そこで本記事では、元京大大学・大学院で林業を専攻していたライターが、林野庁資料にもとづき「森林環境譲与税の使途に関する現状」を徹底解説します!
▼結局うちの自治体/事業体は何をやればよいのかだけパっと知りたい..という方向け▼
データでみる森林環境譲与税使途の全体感
令和6年度における森林環境譲与税の譲与総額は、なんと629億円(実際に使用された額「活用額」は520億)にものぼります。
その大半は森林管理の旗振り役である市区町村に割り当てられます(林業の中心的な担い手の1つである森林組合は市・区単位で構成されるため)。
そして、その譲与額のうち、活用額の約6割が「森林整備」に割り当てられています。
また、活用額の約2.4割が木材利用・普及啓発に割り当てられています。公民館の木質化とかですね。

林業を専攻していた身としては実はこの森林環境譲与税の影響は非常に大きいと感じますね。
林業(林業産出額)の市場規模※はだいたい4-5,000億円。
※林業産出額は、国内における林業生産活動によって生み出される木材、栽培きのこ類、薪炭等の生産額の合計
つまるところ、活用額ベースで、林業市場の10%強に匹敵する市場が形成されている、といっても過言ではありません。
当然、山林の境界特定など、市場に含まれない要素もありますが、間接的にこれらの市場のカンフル剤になることは間違いないわけです。
まとめると、森林環境譲与税の使途は一に森林整備、二に木材利用・普及啓発と言って差しつかえなさそうです。
参照情報:令和6年度における森林環境譲与税の取組状況について
都市/山間地域別の活用使途
※わかりやすい記事とするために、あえて細かい定義はせず、「都市」「山間」の二元論で説明します。捨象している点が多々あることをご了承ください。
結論として、都市は「木材利用・普及啓発」「山間地域との連携」に、山間地域は「森林整備」に森林環境譲与税を活用している傾向にありました。具体的に見ていきましょう。
都市部の傾向
自地域内に整備すべき森林が少ないため、「木材利用・普及啓発」「山間地域との自治体間連携」、将来のための「基金への積立」という傾向にあります。
- 普及啓発や公共施設の木質化
- 市民の目に触れる機会の多い公共施設等に木材を利用したり、啓発イベントを実施する取り組みに活用されています。
- 上流域(山間部)の自治体への資金支援
- 都市部(下流域)が、水源となる山間部(上流域)の自治体に譲与税を提供し、森林管理を支援するケースがあります。
- 例:東京都足立区(林野率0%)は、埼玉県秩父地域と協定を結び森林管理費用を提供する一方で、間伐材で作られた鉛筆の提供を受け、区内の小学生の環境学習に役立てています。
- 体験を通じた環境学習
- 茨城県鹿嶋市(林野率13.7%)が、子どもたちを山間部の大子町へ派遣し、間伐体験などを通じて海と森のつながりを学ぶツアーを実施するなど、教育目的での活用もみられます。
- 基金への積立
- 将来的な大規模事業などに備えて、一旦「基金への全額積立」を行っている割合が15%あり、山間部(1%)と比べて高くなっています。
山間部の傾向
自地域に保全すべき森林を多く抱えているため、圧倒的に「直接的な森林整備」と「担い手の確保」に重点が置かれています。
- 森林整備の実施率が極めて高い
- 令和6年度のデータでは、対象市町村の98%が「間伐等の森林整備関係」に取り組んでいます。
- 具体的な使途
- 実際の山の管理である「間伐」の実施、リモートセンシングを活用した「森林境界の明確化」、災害防止や林業経営のための「森林作業道の整備」、花粉症対策としての「林相転換(伐採と再造林)」などに多く活用されています。
- 人材育成への投資
- 林業の担い手不足を解消するため、「林業実践学校」を開講してチェーンソーなどの技術を教えるといった「人材育成・担い手の確保」にも60%の市町村が取り組んでおり、都市部(15%)と比べて非常に高い割合です。
先進的な譲与税の活用事例
さて、最後に森林環境譲与税の先進的な活用事例について都市部/山間地域/自治体間の連携という観点で見ていきましょう!
都市部の事例:大阪府 茨木市(新設の複合施設「おにクル」の木質化)
取り組み内容
市民会館跡地に新築された文化・子育て複合施設「おにクル」において、内装や開架テーブル、ベンチなどの家具に国内産材(54.7㎥)を使用し、木質化を図りました。

先進的なポイント
この施設は「育てる広場」をコンセプトに、様々な人が集まり活動が交わる場として設計されています。
都市部において、子育て世代をはじめとする多くの市民が日常的に木に触れる機会を創出し、施設のコンセプトと合致した効果的な普及啓発を実現しています。
2. 山間地域の事例:兵庫県 佐用町(放置山林を町が買い取る「町有林化」)
取り組み内容
森林所有者へのアンケートで「約7割が森林を放置し、3分の1が手放したいと考えている」という深刻な実態が判明したことを受け、自ら管理が困難な山林を町が直接引き取る(寄付または買取り)事業を開始しました。買取り価格は土地1㎡あたり10円等の基準(これはほか自治体においても参考になるのではないでしょうか)を設けています。
先進的なポイント
日本全国の山間部が抱える「所有者不明森林」や「放置森林」の解消に向けて、行政が直接山林を引き取り、将来にわたり健全な町有林として管理していくという、非常に踏み込んだ抜本的な解決策を講じています。事業開始からこれまでに約840haもの森林を引き取っており、大きな成果を上げています。
3. 自治体間連携の事例:千葉県 市川市 × 一宮町(資金・CO2吸収量・木材の交換)
取り組み内容
ゼロカーボンシティを表明しているものの森林がなくカーボンオフセットが課題だった市川市(林野率2.1%)と、財源不足で里山整備が進まなかった一宮町(林野率27.3%)が協定を結びました。
市川市の譲与税を使って、一宮町内の間伐を実施しています。
先進的なポイント
一方的な資金提供ではなく、市川市は間伐の実施による「CO2吸収量(約30.8トン)」の還元を受けるとともに、整備で発生した木材をウッドチップにして市川市動植物園内で活用しています。
都市部と山間部の課題(脱炭素と財源不足)を見事に補完し合うWin-Winのスキームが構築されています
まとめ
いかがでしたでしょうか?
森林環境譲与税の制度は一見すると複雑ですが、自治体の特性や森林保有状況、人口に応じて取組の方向性はおのずと定まってくるものになります。
有効な活用に向けては有識者からのアドバイスを通して、自治体/事業体にフィットした施策が普及していくことを願っています!!
まずは気軽に相談してみたいという方はぜひこちらをご活用ください。
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