【令和8年最新】森林環境譲与税「使われない問題」のリアルと、都市・山村部の二極化構造

「森林環境譲与税が自治体に配分されているが、うまく使えていない(基金に積まれているだけ)」というニュースを見かけたことはないでしょうか?

2024年(令和6年度)からは、いよいよ私たち個人の住民税に「森林環境税(年額1,000円)」が上乗せされる形で課税がスタートしました。

年間約600億円という巨大な財源が全国の市町村と都道府県に配分されるこの制度
しかし、その「使い道」には、都市部と山村部で決定的な「構造的な格差」が存在しています。

本記事では、林野庁が公表した最新の「令和6年度における森林環境譲与税の取組状況」の一次データを独自に元京大農学部森林科学専攻ライターが分析し、ニュースの表面だけでは分からない「本当の課題」と「次世代の活用モデル」を紐解きます

目次

1. 令和6年度の全体像:着実に進む実消化と「脱・貯金」

まず、「配られたお金が使われずに貯金(基金積立)されている」という問題の最新の状況を見てみましょう。

結論としては、実はこの状況は劇的に改善しつつあります。

制度開始当初(令和元年度)は、何に使えばいいか分からず「全額基金に積み立てる」自治体が23%もありました。しかし、令和6年度にはわずか7%にまで激減しています。

実際の活用額も右肩上がりで増加しており、令和6年度には市町村と都道府県を合わせて**520億円**が実社会で活用されました。

その内訳は以下の通りです。

  • 間伐等の森林整備:317億円(約60%)
  • 木材利用・普及啓発: 126億円(約24%)
  • 人材の育成・担い手の確保:78億円(約15%)

全体を見れば、批判されがちな「使われない税金」というフェーズは終わりを告げ、本格的な実行フェーズに突入していると言えます

2. 浮かび上がる「都市」と「山村」の構造的ディバイド

しかし、データを市町村の「規模(森林面積)」ごとに分解すると、いびつな構造が浮かび上がってきます。

森林環境譲与税は「人工林面積(55%)」「林業従事者数(20%)」「人口(25%)」という3つの基準で配分されます。(※令和6年度から配分割合が変更・林野率による補正が追加されました)

ここで問題になるのが「人口(25%)」の存在です。

「森林は全くないが、人口がめちゃくちゃ多い大都市」に、億単位の巨額な資金が配分されるという逆転現象が起こるのです。

これを、林野庁のデータ「私有林人工林が1,000ha以上ある自治体(山村部)」と「1,000ha未満の自治体(都市部)」で比較してみましょう。

山村部(1,000ha以上・全国977市町村)の実態

  • 1市町村あたりの平均譲与額:4,861万円
  • 使い道:98%の自治体が「間伐等の森林整備」に予算を投入。
  • 課題: 広大な森林を整備するには、年間数千万円では「全然足りない」。

都市部(1,000ha未満・全国764市町村)の実態

  • 1市町村あたりの平均譲与額:1,193万円(※大都市は数億円に上る)
  • 使い道:森林整備への投資は60%に留まる。
  • 課題: お金は降ってくるが、**「そもそも市内に整備すべき森林がない」。

この「お金が必要な山村部には足りず、お金が余る都市部には使い回す森がない」というミスマッチこそが、都市部において税金が基金に積まれてしまう(消化率が下がる)最大のボトルネックなのです。

3. 次世代の活用モデル:都市部はいかにして税を使うべきか?

では、森林を持たない都市部の自治体は、どうやってこの税金を「生きたお金」にするべきなのでしょうか。

最適解①:徹底した「公共施設の木造化・木質化」

森を持たない都市ができる最大の森林貢献は「木材の大口顧客になること」です。

福岡県福岡市(譲与額: 2.1億円 / 林野率: 32%)

人口161万人の福岡市は、市民に馴染みの深い「公民館」の建築に地域産材を大量使用(約120立米)。譲与税から5,110万円を充当し、都市生活者の目に触れる場所で木材利用と普及啓発を同時に実現しました。

最適解②:上流域の「山村部」へお金を還流させる(自治体間連携)

都市自治体は、「自分の自治体で無理に使わず、水源となっている他の自治体に渡す」という手法です。

東京都足立区 × 埼玉県秩父地域の場合

足立区は森林面積「0ha」。しかし人口が多いため約7,800万円の譲与税を受け取っています。足立区は、自区を流れる荒川の水源となっている埼玉県秩父地域の1市4町(秩父市、長瀞町など)と協定を締結。

自区の譲与税を活用し、秩父の森林管理費用を足立区がストレートに提供しました。そのお返しとして、秩父市からは足立区の小学生に間伐材で作った鉛筆が贈られています。

資金が潤沢な下流域の都市が、資金不足であえぐ上流域の森林整備をスポンサードする。これこそが、制度の歪みを現場の知恵でハックした、最も美しい税の活用モデルと言えるでしょう。

結論:林業の「余白」を生み出すために

森林環境譲与税のポテンシャルは、単なる「補助金のバラマキ」ではありません。

福岡市のように都市のコンクリートを木質化する財源としても、足立区と秩父市のように「都市と山村を経済でつなぐ架け橋」としても機能し始めています。

グリビズでは、こうした自治体の「森林環境譲与税の使途に関する企画立案」や「民間林業会社との連携コーディネート」、煩雑な「バックオフィス業務の代行」までを一気通貫で支援しています。

各自治体に眠る資金を「生きた森林整備」に直結させたい担当者の方は、ぜひ一度グリビズの無料事業相談をご活用ください。あなたの林業経営と森林行政に、確かな「余白」を生み出します。

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この記事を書いた人

京都大学で森林科学を専攻し、ITベンチャーや外資系コンサルで培った戦略的視点を強みに、林業の経営支援に役立つ情報を発信中。

現在は、埼玉県飯能市で築160年の古民家民泊を経営する傍ら、森林価値向上に向けた地元林業関係者との連携PJを主導しています。

お困りのことがあればぜひご相談ください。

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