京都大学農学研究科森林科学を専攻していた、筆者の平井が、林業業界のイノベーションについて深堀をしていきたいと思っています。
林業業界におけるイノベーションとは
イノベーションとは、社会にインパクトを与える新たなモデル・オペレーションの開発のことです。
イノベーションとは、既存の要素を新しく組み合わせて価値を創造し、社会に変革をもたらす取り組み
そもそも林業とは
「林業」というわかりづらいトピックのため、前提から整理しましょう。
林業は森林の持続的な管理と資源利用を通じて、木材や生態系の保全などさまざまな価値を創出する活動です。

林業従事者は、数十年という長い時間軸のなかで、木材生産を中心とした森林管理を行います。
植林して、木を育て、下草を刈り、40-50年経ってようやく伐期が来ます。とても長く壮大な産業です。
また、近年は林業の一連の活動の中で、木材の生産だけでなく、生態系のバランスを守り、酸素供給や景観の提供、観光など多様な役割を果たす重要な機能が注目されています。
※林業分野のイノベーションの可能性について、もっと学びたい方はこちらの書籍がおすすめです。
林業×イノベーションの中身

林業の基本的なビジネスモデルはいたってシンプル。
立木を伐採した「丸太」を「木材市場」に売る。
販売原価は①伐採・搬出機材(チェーンソー、運送車両等)②人件費③育林費用④その他変動費(燃料代)
イノベーションの方向は「売上を伸ばす(付加価値を高める)」か「販売原価を減らす」の2つ。
林業のイノベーションを場合分けするとすると
付加価値を高める⇒素材加工まで統合する(ex:製材までやる)、素材以外の価値をつける(ex:CO2吸収などの別作用を評価)
販売原価を減らす⇒伐採・搬出の効率化(ex:ハードウェアの進化)、新たな形質の樹木の育成(ex:早生樹)
国内における林業のイノベーション事例
DeepForest Technologies-付加価値を高める
京都大学の先輩方がやられている、「ドローンによる森林データを提供」するスタートアップ。
ドローンを活用して、森林全体の炭素固定量や樹種を把握し、カーボンオフセットや生物多様性クレジット市場への展開を支援するサービスを展開しています。
今後、炭素排出抑制や生物多様性の劣化防止に向けた巨大な規制マーケットが登場することは間違いありません。
TNFDなどの国際的な枠組みへの対応が求められる、プライム上場企業への販売がキーポイントになってくるでしょう。
東京チェンソーズ-付加価値を高める
東京チェンソーズのすごさを一言で表すなら「企画を通した付加価値の向上」
東京チェンソーズは「1本まるごと販売」というコンセプトで各種素材の活用を行っています。
実はこれ、とてもすごいこと。
私の体感ベースですが、丸太の部分を除いた木の約半分くらいは林地に捨てられてしまうものなんです。
そこで、元来捨てられていた木に新しい価値を吹き込むために様々な企画を展開されています。
木材を活用した小物製品をお手頃に買える「山男のガチャ」、写真にあるような素敵な木製品を出張販売する「森のデリバリー」、各種コラボ商品などなど、枝や小径な木に新しい需要を生み出しています!

参照:東京チェンソーズ公式HP
SOLABLE FOREST
海外におけるイノベーション事例
米国:Mast Reforestoration-付加価値を高める
北米を代表する火災後の森林再生および炭素除去会社。
アメリカは山火事大国。日々、どこかで広大な森林が火事によって焼き尽くされ、種子含めて土地の再生力を失っています。
アメリカですでに失われた600万エーカーの土地を回復するには、従来の方法では50年かかりってしまいます。
同社は野生種の保護及び苗木の育成、カーボンオフセット市場との連結による資金調達により、高速の森林再生というソリューションを提供しようとしています。
スウェーデン:データ連携型林業-販売原価を減らす
スウェーデンは林業のデジタル化先進国。
代表的な企業はHolmen Skog社。伐採機械とクラウドを接続し、適切な林業施業をITの力で後押ししています。
具体的には、現場の作業状況や生産データを即時に把握し、効率的なオペレーションや品質管理、さらにはサプライチェーン全体の最適化を実現しています。
私が考える、林業業界のイノベーション
ここまで、様々な取り組みを紹介してきました。
そのうえで、今後日本で求められるのは既存のインフラを活用しつつ、そこから新しい価値を生み出すアプローチです。
林業の1丁目1番地は、木を売ること。
ここから目をそらしてはいけないと私は考えます。
なぜなら、森林組合を中心とした、既存の日本の林業インフラの蓄積があること。
山林へのアクセスの良さがあること(急峻で作業効率は良くないですが)
さらに、都市へのアクセスの良さがあること。
一大消費地である都会と森林が近く、生産拠点が死んでいないこの日本で、木材という素敵な素材を供給すること、この方向性でイノベーションを起こしたいと思っています。
具体的には、簡易的な製材能力がある素材生産業者、製材業者と連携し、家具材や内装材などを各地で販売。
消費者にはそこまで取りに来てもらうことにします。販売者側は従来よりも高値で売ることができるほか、新たなニーズ(例:民泊用物件の内装材)の検知を行うことができます。さらに、消費者側はより安い1点もののこだわり製品を簡単に入手することができるようになります。
取引のプラットフォームはECのような形で行います。また、このECの取引によって固定された炭素量も可視化され、単純な材の取引だけでなく、環境価値自体もトラッキング可能な形にします。
こういった方向性でイノベーションを起こしていけるよう、チャレンジを続けていきます!
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ぜひ、林業業界の次なるイノベーションに注目していきましょう!
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