ペーパーレス化を取り巻く状況
近年、あらゆる業界の中で「ペーパーレス化」の動きが強まってきています。
法律面でも、年々電子文書に対する規制は緩和されており、企業活動におけるペーパーレス化のハードルは徐々に低くなってきていると言えます。今後も一層ペーパーレス化への取り組みは各方面で広がることが予想されます。
その一方で、近年ペーパーレス化に注目が集まっている背景を体系的に理解するのは容易ではありません。
そこで、こちらの記事では
・ペーパーレスとは
・ビジネスにおける効果
・環境保全の観点での効果
・政府が推進するペーパーレス化
・ペーパーレス化推進の障壁
について解説していきます!
・企業の業務効率改善に関わる方
・CSR/サステナビリティ関係者
の方にはとてもおすすめの内容となっています!
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ペーパーレスとは
ペーパーレスとは、その名の通り「紙をなくすこと」を意味しており、具体的には「紙を電子化すること、そしてそのデータを活用・保存すること」を指します。
電子化することで、様々なメリットが得られるため、ペーパーレス化は企業が取り組むべき一大テーマとなっています。
ペーパーレス化の目的
ペーパーレス化の目的は大きく分けて2つあります。1つ目はビジネスにおける効果、2つ目は環境保全における効果です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ビジネスにおける効果
ペーパーレス化を進めることで、ビジネスにおいて様々な効果を得ることができます。
まず、業務効率改善です。電子化することで、半永久的な保存が可能になるだけでなく、検索性も向上します。
次に、セキュリティ強化にも寄与します。セキュリティソフト等を活用することで社内の情報を安全に保存することが可能です。
さらに、社内外での共有も容易になります。共有のハードルが下がることで、交渉や提案をより円滑に進めることが期待できます。他にも近年急速に普及しているクラウド契約、クラウド請求のようなサービスとの連携を行うことで、ビジネス全体の生産性を高めることができます。
環境保全の観点での効果
一般的に、ペーパーレス化の取り組みには、森林の伐採を防ぐことができるといった環境面での効果が期待されています。
しかし、本当にそうでしょうか?
森林は、大きく分けて2つの種類に分けることができます。
植林→育林→伐採→植林・・・のように再生産を前提とした人工林とそうでない森林です。
後者の森林、すなわち「一度伐採するともとには戻らないor戻りにくい森林」を伐採し、紙を生産しているのであれば、まさにペーパーレス化を「森林破壊を防ぐ手段」として位置づけることが可能です。
しかし、日本製紙連合会の2021年の情報を参照すると、輸入材のほぼ100%の原材料が製材の際に生まれた端材や他に使い道のない低質材で賄われています。
参照:日本製紙連合会「パルプ材の原料ソース別構成比 <2021>」https://www.jpa.gr.jp/states/pulpwood/index.htm
したがって、森林資源を使う=森林破壊とするのは少し乱暴な理論です。
また、紙を利用することで元来廃棄される低質な材から(わずかではありますが)収益を上げることができます。こういった1本の木を無駄なく使い切ることは「カスケード利用」と呼ばれ、森林資源利用の基本になります。
したがって、エネルギーや化石燃料の使用、環境悪化への影響等を総合的に考慮しない限り、紙の使用をやめる=環境にやさしいとは言い切れません。
したがって、ペーパーレス化を推進する企業体が具体的な環境インパクトに基づいて環境効果を把握していくことが最も重要です。まずは、現状の環境への影響をモニタリングすることから始めていきましょう。
↑研究の際に訪問させていただいたパルプ用チップを生産する工場。奥側の細い木材がパルプ用チップの生産に用いられます。
政府が推進するペーパーレス化
ペーパーレス化については、政府も推進しています。具体的には、「電子帳簿保存法」「e-文書法」といった電子書類の使用を認める法律も制定されています。2022年には、ペーパーレス化やテレワーク推進の観点から電子帳簿保存法が改正され、各種書類の保存要件が抜本的に見直されました。
詳しく知りたい方はぜひ調べてみてください!
ペーパーレス化推進の障壁
ペーパーレス化を進めるメリットは非常に大きいですが、その反面、実行おいては障壁が存在します。
具体的には、
➀初期コスト
➁システム障害への不安
③セキュリティ上の安全性の確保
といった項目が挙げられます。コストやリスクを踏まえて、適切なツール選択することが重要です。
まとめ
いかがでしたか?ぜひビジネスや環境面で期待できる効果をもとに、ペーパーレス化の推進を検討してみてください!