親の施設入居や死亡をきっかけに、実家をどうすればよいか分からず、不安になる人は少なくありません。実家には家財、名義、相続、固定資産税、近隣への連絡など、同時に考えることがいくつもあります。
実家じまいとは、片付けだけではありません。相続手続き、売却、解体、空き家管理、仏壇やお墓の整理まで含めて、実家を残すのか、売るのか、解体するのかなどを決めることです。
この記事では、状況別に最初に確認すること、進め方、費用の見方、期限がある手続きを説明します。最初に確認することから、順番に説明します。
この記事のポイント!
- ✔実家じまいは片付けと相続確認から始めます!
- ✔相続登記は2024年4月から義務化されています
- ✔費用は現地で見積もってもらい、内訳を確認します
- ✔売却・解体の前に税金と空き家の管理費を確認します
実家じまいとは?始める時期と状況別に確認すること
実家じまいとは、親の家を片付け、相続や名義を確認し、売却・賃貸・解体・管理などを決めて進めることです。仏壇やお墓、形見分けの整理まで含めて考えると、後で家族が判断に迷うことを減らせます。
始めるタイミングは、親の施設入居、親の死亡、実家に誰も住まなくなったこと、維持費の負担が増えたことなどです。雨漏り、シロアリ、草木の越境、近隣から連絡が来たときも、早めに状況を確認してください。
POINT
最初に確認するのは、名義・書類・家族の意向です。片付けや解体を急ぐ前に、誰の不動産なのかを確認しましょう。
親が健在なら、本人の意思を確認できるうちに話し合います。預貯金、保険、不動産資料、重要書類、仏壇やお墓、形見分けの希望を聞いておくと、後の判断がしやすくなります。
施設入居中なら、住民票、郵便転送、火災保険、電気・水道・ガス、防犯、草刈り、近隣連絡先を確認します。誰が月に一度見に行くのかも決めておきます。
死亡後なら、遺言書、相続人、相続財産、実家の名義、固定資産税通知書、権利証または登記識別情報、借入や抵当権の有無を確認します。相続人が複数いる場合は、勝手に処分を進めないことが大切です。
| 状況 | 最初に確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 親が健在 | 本人の意思、重要書類、財産資料、仏壇・お墓 | 本人が判断できるうちに希望を聞く |
| 施設入居中 | 郵便転送、火災保険、ライフライン、防犯 | 空き家管理の担当者を決める |
| 死亡後 | 遺言書、相続人、名義、固定資産税通知書 | 相続人全員で方針を共有する |
| 相続未了 | 登記名義、祖父母名義の有無、相続登記の要否 | 売却や解体前に所有者を整理する |
相続未了の場合は、売却や解体の前に所有者名義を確認します。相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
山林を相続した場合の登記費用や手続きは、山林の相続登記にかかる費用はいくら?でも詳しく整理しています。
実家じまいの手順と進め方
実家じまいでは、片付けを始める前に、実家を売るのか、残すのか、解体するのかと、名義を確認しておきます。共有名義や相続未了のまま進めると、売却や解体の段階で止まることがあります。
まずは家族、兄弟姉妹、相続人で話し合い、売る、貸す、住む、解体する、空き家のまま管理する、まだ決めない、のどれにするかを話し合います。話し合った内容は、後で確認できるようにメモや文書で残しておきます。
- 家族・相続人で今後の方針を話し合う
- 実家の名義、土地・建物の登記、未登記建物を確認する
- 貴重品と重要書類を先に探す
- 家財整理・遺品整理を行う
- 必要に応じて業者に見積もりを依頼する
- 売却・賃貸・解体・管理・墓じまいの手続きを進める
CHECK
- 登記名義が親、祖父母、共有名義のどれか
- 未登記建物がないか
- 境界、接道、農地・山林の有無
- 抵当権や借入が残っていないか
重要書類は、片付けの前半で探します。通帳、印鑑、保険証券、年金関係書類、権利証、登記識別情報、固定資産税通知書、契約書、借用書、写真、貴金属、骨董品を分けて保管します。
家財整理では、残す物、売る物、譲る物、処分する物、供養する物に分類します。形見分けは先に決め方を話し合い、誰が何を受け取るかを一覧にしておくと、家族間のもめごとを避けやすくなります。
不用品回収や遺品整理業者を使う場合は、家庭ごみを回収できる許可や市区町村からの委託の有無を確認します。環境省は、廃棄物の処分に無許可の回収業者を利用しないよう注意を促しています(出典:環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」)。
古物商許可は、中古品の売買に関する許可です。古物商許可だけで廃棄物回収ができるわけではありません。遺品整理サービスでは、見積書の内訳や、追加料金がかかる条件も確認します(出典:国民生活センター「遺品整理サービスを利用するときの手引き」)。
| 残す記録 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 議事録 | 家族で話した日付、参加者、決定事項 | 言った・言わないを防ぐ |
| 費用分担表 | 片付け費、税金、修繕費の負担者 | 支払いの不公平感を減らす |
| 作業担当表 | 書類探し、業者対応、近隣連絡 | 一人に負担が偏るのを防ぐ |
| 形見分けリスト | 受け取る人、品物、確認日 | 後日の争いを防ぐ |
共有名義の実家は、共有者の一人だけで売却を決めることはできません。委任状の有無も含めて、手続きごとに誰の同意が必要かを確認しましょう。
実家じまいの費用の目安と相見積もりの注意点
実家じまいの費用は、家の状態と、実家をどうするかで大きく変わります。主な費用は、家財整理・遺品整理、不用品処分、ハウスクリーニング、リフォーム、測量、司法書士費用、仲介手数料、解体費、空き家管理費、墓じまい費用です。
費用は一律ではありません。家の広さ、荷物量、搬出しやすさ、前面道路、買取できる品物の有無で変わるため、現地見積もりを基本にしましょう!
| 費用項目 | 変動しやすい要因 | 確認すること |
|---|---|---|
| 家財整理・遺品整理 | 荷物量、階数、搬出経路、買取品 | 作業人数、車両台数、処分費、買取額 |
| 解体費 | 構造、延床面積、残置物、前面道路 | 整地、近隣あいさつ、追加工事の条件 |
| 測量費 | 境界の状態、隣地数、土地の広さ | 売却に必要な測量かどうか |
| 空き家管理費 | 遠方かどうか、草木、雪害、修繕 | 巡回頻度、写真報告、緊急対応 |
| 墓じまい費用 | 墓石撤去、改葬先、供養、納骨 | 寺院や墓地管理者への確認事項 |
解体費は、木造、鉄骨、鉄筋コンクリート造などの構造で変わります。残置物、アスベスト調査、井戸、浄化槽、庭石、樹木の撤去があると、追加費用が発生する場合があります。
空き家として管理を続ける場合も、固定資産税、火災保険、電気・水道の基本料金、草刈り、雪下ろし、雨漏り修繕、防犯対策、近隣対応費がかかります。誰も住んでいなくても、固定資産税や草刈り、修繕などの費用はかかり続けます。
注意!
解体を急ぐ前に、税金と売却条件を確認しましょう。更地にすると固定資産税の扱いや買主の希望が変わる場合があります。
複数の業者から見積もりを取るときは、総額だけで決めないようにします。作業人数、車両台数、処分費、買取額、追加料金の条件、供養費、清掃範囲、解体後の整地、近隣あいさつ、保険加入の有無を比べます。
解体を検討する前に、相続した空き家を売ったときの特例も確認します。一定の要件を満たす場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度があります(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
空き家が管理不全空家や特定空家になると、固定資産税等の住宅用地特例が解除される場合があります。改正空家法は2023年12月13日に施行されています(出典:国土交通省「空き家対策 特設サイト」)。
山林付きの実家で境界が不明な場合は、測量費も確認しておきます。山林の測量費の考え方は、山林の測量費用はいくら?も参考になります。
相続・売却・空き家管理の期限と注意点
実家じまいで期限に注意したい手続きは、相続登記と税金関係です。特に不動産を相続した場合は、名義を親や祖父母のまま放置しないようにします。
相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります(出典:法務省「相続登記の申請義務化について」)。
遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記という制度も選択肢になります。これは、自分が相続人であることを法務局に申し出る制度です。遺産分割そのものを終わらせる手続きではないため、使い方は慎重に確認しましょう。
POINT
期限がある手続きは、先に確認しておきます。片付けの前に相続登記と売却時の税金を確認しておくと、やり直しを減らせます。
相続した空き家を売る場合、一定要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。適用には、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡など、複数の要件があります。
また、この特例は譲渡期限や建物の耐震性、解体後売却、相続人の人数による控除額の違いも確認が必要です。相続人が3人以上の場合、一定の譲渡では控除額が最高2,000万円となる扱いがあります(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。
| 確認項目 | 売却前に見る理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 名義 | 所有者でないと売却が進まない | 祖父母名義のままのことがある |
| 境界 | 買主が不安に感じやすい | 隣地との確認が必要になる場合がある |
| 接道 | 再建築できるかに関わる | 価格や売却方法に影響する |
| 未登記建物 | 登記と現況が違うことがある | 手続きが増える場合がある |
| 農地・山林 | 売却先や手続きが限られる場合がある | 農地法や森林管理の確認が必要 |
| 雨漏り・シロアリ | 契約条件に影響する | 修繕か現況売却かを決める |
管理不全空家や特定空家に該当すると、行政指導や勧告の対象になることがあります。勧告を受けると固定資産税等の住宅用地特例の対象から外れる可能性があります(出典:国土交通省「空き家対策 特設サイト」)。
先に解体するか、耐震改修して売るか、現況のまま売るかは、税金、固定資産税、買主の希望、解体費、補助金の有無で比較します。ひとつの方法だけで決めず、複数の不動産会社や専門家に確認してください。
遠方の実家は、郵便転送、通水、換気、火災保険、鍵管理、草刈り、害虫、雪害、近隣からの連絡窓口を決めます。遠方の場合は、誰がいつ見に行くかを決めておきます。
農地が含まれる実家では、売却や転用に農地法の確認が必要です。農地法の違いは、農地法3条・4条・5条の違いを比較で整理しています。
墓じまいと売れない実家の手放し方を比べる
実家じまいでは、家だけでなく仏壇やお墓の整理も必要になることがあります。墓じまいは、家族や親族で合意し、遺骨をどこに移すかを決めてから進めます。
一般的には、改葬先を決め、墓地管理者から埋葬に関する証明を受け取り、自治体で改葬許可を得てから遺骨を移します。墓地や埋葬については、墓地、埋葬等に関する法律で基本的なルールが定められています(出典:厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」)。
注意!
墓じまいは、先に親族の同意を得ます。費用だけでなく、供養の方法や改葬先への考え方で意見が分かれることがあります。
墓じまいの費用は、墓石撤去、閉眼供養、改葬先費用、納骨費、寺院へのお礼などに分かれます。離檀料で揉める場合は、契約や規約を確認し、自治体や消費生活相談の利用も検討します。
売れない実家については、ひとつの方法にこだわらず比較します。価格を下げて売る、隣地所有者へ売る、空き家バンクを使う、賃貸にする、解体して土地として売る、0円譲渡を検討する、相続土地国庫帰属制度を調べる、管理を続けるなどの方法があります。
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 価格を下げて売却 | 買主候補はいるが価格が合わない | 売却価格と費用の差を確認する |
| 隣地所有者へ売却 | 単独では使いにくい土地 | 境界や価格の合意が必要 |
| 空き家バンク | 自治体の制度がある地域 | 登録条件を確認する |
| 賃貸 | 修繕すれば住める家 | 管理や修繕の負担が続く |
| 解体して土地売却 | 建物の老朽化が進んでいる | 解体費と固定資産税の変化を確認する |
| 0円譲渡 | 価格より手放すことを優先したい | 引き受け先が見つかるとは限らない |
| 相続土地国庫帰属制度 | 相続等で取得した土地 | 建物がある土地などは難しい場合がある |
| 管理継続 | すぐに決められない | 税金と管理費が続く |
相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日から始まった制度です。相続等で取得した土地を国に引き取ってもらう制度ですが、建物がある土地、担保権がある土地、境界が明らかでない土地などは要件上難しい場合があります(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度について」)。
山林で国庫帰属を検討する場合は、要件を先に確認する必要があります。詳しくは、相続土地国庫帰属制度で「国にいらない山林を返す」条件は?で解説しています。
寄付は、自治体や法人が必ず受けるわけではありません。管理負担や利用価値が判断されるため、必ず使える方法だと思い込まないほうがよいでしょう。
農地・山林付きの実家は、農地法、森林管理、境界未確定、接道、土砂災害リスク、草木管理などが売却の妨げになりやすいです。山林の売却方法は、山を売るには?4つの売却手法と主要サービスでも確認できます。
いらない農地を相続しそうな場合は、相続放棄や国庫帰属の可否も含めて早めに整理します。農地の扱いは、「いらない農地」の相続を回避・放棄する現実的な手段で詳しく解説しています。
まず取り組むべきことは、家族で実家の名義・重要書類・今後の方針を確認することです。そのうえで、期限のある相続登記と、放置すると負担が増えやすい空き家管理から始めてください。
売却、解体、相続税や譲渡所得税、農地・山林の扱いは、状況により判断が変わります。個別の判断は、司法書士、税理士、不動産会社、自治体の担当窓口などに確認してください。

