TCFDとは?わかりやすく解説!背景や開示項目についても整理します。

サステナビリティ

Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD)は、気候変動に関連する金融情報開示に関するタスクフォース(チーム)です。

TCFDは2015年のパリ協定の採択後、気候変動の影響を評価し、金融機関や企業が気候変動に関連するリスクや機会をどのように評価し、開示すべきかについてのガイドラインを提供するために設立されました。

背景としては、気候変動が経済や金融市場に与える影響がますます明らかになってきたことが挙げられます。気候変動による極端な気象や温暖化に伴うリスクが、企業の価値や収益に影響を与える可能性が高まってきました。

例えば、小麦価格の高騰、半導体用の処理水問題など企業と自然環境の問題は切っても切り離せない状況になります。

本記事では、TCFDの概要や設立された背景、企業が開示項目について詳しく解説していきます。

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TCFDとは?わかりやすく解説

あらためて、「TCFD」とは、「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略で、気候変動に関連する金融情報開示に関するタスクフォースを指します。

TCFDは、2015年に設立された組織で、気候変動によるリスクと機会に対処するために企業や金融機関がどのように情報を開示すべきかに関する国際的なガイドラインを提供するために活動しています。

簡単にいうと、
「企業ごとに気候変動による対応状況を開示することで、投資家側が適切に評価できる状態を作る」という目的のため活動する組織です。

TCFDの背景と目的については前述の通りですが、具体的に以下の要点が挙げられます:

リスク評価と情報開示:

TCFDは、気候変動によるリスクと機会を企業と金融機関が評価し、それらの情報を投資家や市場参加者に開示するためのガイドラインを提供します。これにより、投資家やステークホルダーが気候変動に関連するリスクを評価し、適切な意思決定を行いやすくなります。

金融市場の安定性

気候変動に伴うリスクは、金融市場の安定性に影響を与える可能性があります。TCFDのガイドラインは、気候変動関連のリスクを適切に評価・管理することで、金融システム全体の安定性を向上させることを目指しています。

資源を浪費し、持続性を評価しない企業活動がこのまま続いてしまうと、いつの日か堰を切ったように資源状況が悪化→一次産業が不安定化→その余波が全産業にわたる、、というような最悪なシナリオも想定されます。

投資判断の向上

TCFDの情報開示ガイドラインは、投資家が企業や金融機関の気候変動に関するリスクと機会を評価し、持続可能性を考慮した投資判断を行うのに役立ちます。中長期的に安定している企業に投資するために、TCFDの情報開示は役に立つわけです。

参考記事:企業のサステナビリティ

透明性と持続可能性

TCFDは企業と金融機関に対して、気候変動に関する情報を透明かつ一貫して開示することを奨励し、持続可能なビジネスモデルの構築を支援します。

TCFDの提供するガイドラインは、気候変動によるリスクや機会が企業の価値や収益に与える影響をより適切に理解し、投資判断や戦略の策定に反映させるための手助けを提供することを目的としています。

TCFDはなぜできた?背景は?

TCFDが設立された理由の1つに、地球温暖化、環境汚染などの環境問題があります。
企業活動が続かないリスクがあること、そして「持続可能性」に対する評価が株式市場でなされていないことから、こういった試みが始まりました。

TCFDのシナリオ分析とは?

TCFDのシナリオ分析は、気候変動の未来の可能性を想定し、それに伴う影響を評価するプロセスです。企業や金融機関が気候変動にどのように対処するかを理解し、リスク管理や戦略策定に役立てることを目的としています。

具体的なステップは以下の通りです。

未来のシナリオの作成

異なる気候変動の進行シナリオ(例:温暖化の進行度合いや温室効果ガスの排出量)を設定します。これは将来の可能性を想定するための仮想的なストーリーです。

リスクと機会の評価

各シナリオに基づいて、企業や金融機関のビジネスへの影響を評価します。気候変動によるリスク(供給チェーンの影響、規制変更など)や機会(新たな市場、技術の開発)を明らかにします。

戦略の策定

シナリオ分析の結果をもとに、気候変動に対する適切な戦略を考えます。リスク軽減や新ビジネス展開へのアプローチを検討し、将来への適切な対応策を検討します。

情報開示

シナリオ分析の結果や関連する情報を投資家やステークホルダーに開示することで、企業のリスク管理と持続可能な戦略に対する透明性を高めます。

シナリオの更新

未来の状況は変化するため、定期的にシナリオを更新して新たな情報や科学的な知見に基づいて分析を行います。

シナリオ分析は、将来の不確実性に対処し、事業の長期的な持続可能性を確保するための重要なツールです。企業や金融機関がリスクを最小化し、新たな機会を活かすための戦略的な意思決定を行うのに役立ちます。

参照:環境省

企業がTCFDで開示する情報はどんなもの?

2017年6月に公表されたTCFDの最終報告書では、企業に対して以下の項目について情報開示を推奨しています:

ガバナンス(Governance)

気候変動に関する経営体制や取り組み方針を明らかにすることで、持続可能な戦略の支援を強調しています。

戦略(Strategy)

短期・中期・長期の時間軸で、気候変動が経営に及ぼす影響とそれに対する企業の戦略を示すことが求められています。

リスクマネジメント(Risk Management)

気候変動に関連するリスクを特定し、評価してから軽減策を取るアプローチを提示することが奨励されています。

指標と目標(Metrics and Targets)

リスクと機会を評価するための指標や進捗度の目標設定について情報開示することが勧められています。

※TSFDを設立したFSB(金融安定理事会)は各国の金融関連省庁や中央銀行からなる機関であり、国際金融市場の安定性と監督を担当しています

実は活発!日本企業のTCFDに対する取り組み

実は、TCFDに賛同する企業数は国別でいうと日本が世界一!
ここでは、特にTCFDの取り組みをリードする企業3社にスポットをあてます。

トヨタ自動車株式会社

トヨタは、水素燃料電池車の開発と普及に取り組み、持続可能なモビリティの実現を目指しています。また、サプライチェーンにおける二酸化炭素排出削減を目指し、サプライヤーへの環境への配慮を求める取り組みも行っています。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)

MUFGは、気候変動に関するリスクと機会を評価し、融資の審査において気候変動関連情報を考慮しています。また、気候変動に関するファイナンスを拡充し、再生可能エネルギーや低炭素技術への投資を推進しています。

パナソニック株式会社

パナソニックは、持続可能な商品の開発と提供に注力しており、再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上に貢献する商品を展開しています。また、電動化技術の研究開発や低炭素社会への貢献を強調しています。

それぞれの企業は、自社の特性に合わせて環境への配慮や持続可能なビジネスモデルの構築に努めており、TCFDの指針を活用して独自の成果を上げていますね!

参照:TCFDコンソーシアム

まとめ

いかがでしたか?

TCFDは気候変動に関連する金融情報開示に取り組むタスクフォース(組織)であり、
企業や金融機関の気候変動リスクと機会の評価を支援し、持続可能なビジネス戦略の構築を促進しています。

そんな潮流を踏まえて、日本企業もTCFDへの積極的な参加と独自の取り組みを通じて、地球環境と経済の調和を目指しています!

持続可能な社会の構築を目指して、TCFD開示をはじめとした脱炭素経営への取り組みについて学んでいきましょう!